トランスパラント・フットプリント

ちはやブルーフィルム倉庫

2012-09-30から1日間の記事一覧

フィッシャーズ・フィールド

高校生 会長・副会長・書記 踏切の向こう側で手をつないでいた。 生徒会の副会長と書記の二人はいつも最後まで残って仕事をしていた。会長の私はというと、家が店をやっているものだから、早く帰って手伝いをするなり家事をするなりのことにあたらねばならな…

バリー・サウザンド

大学生 才気ある方視点 ダメそうな子がいつもまとわりついている、いやなきもちはしないけれど、卑屈なところがカンにさわる、助けてもらわないとなんもできないのに。いろいろいっていると「でも、あたしはあなたみたいにできるわけじゃないんだもの。すご…

虚の口(ウツロノクチ)

私は、美術部だった。だったというのはもうやめてしまったからだ、わがままを通して親に買わせた油絵の具はそろそろロッカーの中でカビが生えていることだろう。やめたことは親には言っておらず、活動をしていることにして必要経費と言って小遣いをせびるの…

杙の島(クイゼノシマ)

夥しい死の上にいた。 風が金網を揺らす音がする。室外機がやかましく唸っている。それだけ。あとは、私の呼吸の音、私の心臓の音。それすらもどこか遠くからサランラップ越しに聞こえてくる。電子レンジであたためられゆく仔猫のビデオを見ているかのごとし…

薊の棘(アザミノトゲ)

主人公(少年)20程度 精神年齢16 主人公(少女)15程度 精神年齢高め 主人公はもちろん、自分も生きることに意味を見出せない男子。にわかに少女を救おうとかなんか自分の使命感見いだしちゃった少年視点メインから、いやべつにそんなことおもってないんだ…

シオンナモナの塔

「あれまあ、どうして起こしてくれなかったんよう!」 そんな声で目が覚めた。 制服の、少女の後ろ姿が見えた。うなじと運転手に食ってかかる横顔が見えた。怒っているようなのに眉は太い、上で留められた髪のおかげで露出したうなじは世辞抜きに綺麗で、寝…

コンビニラノベネタ

15歳店長♂ 浪村展長(なみむらのりなが) 夏・南の方・しけたコンビニ・押しつけられ店長業務 もしくは押しつけられじゃなくて、自分からそれをしなければならない何か。 →自分探しの旅の途中、コンビニでクレーム付けたら店長はいません。 →店長募集中。 →ワ…

YAMINABE

闇鍋戦記 □キャラクター 「はい、かぁん。もひとつ、かぁん」 「なっ……ば、化け物!!」 「失敬な。ああ、わたしを化け物と呼ばわったことにじゃあないよ。そんな豆鉄砲でこの『逆鍋』がどうにかできると思っちまったことだね」 「ぬう……」 芝屋狭左衛門の視…

味覚からはじまる僕の恋心ちきしょう親父と同じハミガキ

放課後の教室だけど俺全裸弥生の補習二の句がつげぬ >三月にもなって補習かよ、全裸も罰にはならないようだ。弥生って女の子のなまえじゃねえぞ喜ぶな! 味覚からはじまる僕の恋心はちまきの君「そこにいたまえ」 >ダジャレ 味覚からはじまる僕の恋心毎朝…

この日まで返せずにいた消しゴムをけんけんぱーのさいごにおいて

しんしんといつのまにかの寒空にそろそろときはちぢむころです 伸びすぎたあなたの爪を含みます傷つかぬよにはんでゆきます あの子だけ桐のリボンの夏の空第二ボタンをケヤキの下に きみのもと走ってしまったあの娘リボンの味をおしえてやるよ 似た痕を見た…

ファン・デル・ワールスカ

それはさておき、この世界のファンデルワールスカがいつもぼくを攻撃している。ファンデルワールス力(りょく)ではない。そんな物理の授業でぼくをこうげきするような生やさしい「力」なんてカテゴリーに包括されるようなものではない。 ぼくをいつもいつも…

終の苑(ツイノソノ)

地を這う人々よりも、わずかばかり空に近い場所で。 さらに空に近い場所へ、既に動かぬ足を踏み出した。 本当ならばその汚れきった魂は、糸を断たれてヘリウムいっぱいにはらんだ風船のように空へと持ち上がり、エアの無くなった上空で溶ける。そのはずだっ…

リサ・キーンの朝食

ぼくらは、スクールバスが嫌いだ。 嫌いだ、といってどうなるものでもない。スクールバスがなければ学校には通えない、学校に通えなければ学ぶことも友達と遊ぶことも教師たちにしかられることもままならない。ぼくらの学校は、とても歩いては通えない場所に…

スケール・ウィズ・スカル

朝早い教室だった。朝練のはずだったけれど、俺しか部室にいなかった。一人でフるのもバカバカしいのでさっさと教室に来たというわけ、コバッキーはあとでシメるとボードに書きおきして扉を閉めた。震えて眠れ。 木曜日だからグラウンドで野球部が練習してい…

プライアー・バーサス・ライアー

吐き出さなかった想いは、恋になんないし。 そうノッピは言った。 あたしとその他の有象無象は教室で待っていた。ここにいるのは勝者だった、四限のチャイムが鳴り終わる前にあたしが足した一本の線が勝敗を定めてしまった。ノッピはすぐに戻ってきた。後ろ…

メメントモリ・セメタリー

朱茅ほのかは、猫がどこに帰るのか知りたかった。 それだけなんだ。 塾から帰るところだった。 さっきまでほのかは教室の中にいた。三人の小学生がお行儀良く揃って横並びになれる机と椅子のセット。真ん中の席に座ると授業中にトイレに行きにくくなってしま…

テルミット・ルミネセンス

■1■ ――「納涼十三里半浜大花火大会」 ブロック塀に貼られたポスターだった。近くの中学生が描いたらしきそれは、花火そのものよりも浴衣を纏った少女が真ん中に配置されていた。下の方には日時と場所と注意事項が大きく赤字で印刷されている。その情報の群…

シルクロジック・クロスゴシック

シルクロジック・クロスゴシック 「今度の連休に一緒に釣りでも行きませんか? 二人で!」 ――と来たものだ。これはいわゆるデートのお誘いというものではないのでしょうか? さらに「――連休に」などといっているからには、そう「お泊まり」すらあちら様の視…

アイシクル・サイクル

アイシクル・サイクル 石井孝親〔いしいたかちか〕の火曜と木曜と土曜の朝は早い。 どれくらい早いかというと五時には起きている。そんな時間だとお袋も相手にするのがバカバカしいとばかりに昨日の夜の内に弁当の準備をしておいてくれている。孝親は朝起き…

パーペチュアル・テンペラチュア

――スノウズ―― 寒い日のことだった。 その日も一年生だった。渋谷にも新宿にも寄り道しないまことつまらぬ私だった。ハンバーガーチェーンとコンビニと牛丼屋とベーカリーのある最寄り駅。本屋さんも魚屋さんも肉屋さんもとっくに泥の海に沈んでしまった街を…

シンキング・シンク・ライク・クライシス

夏もなかばの海だった。 赤と白のパラソルの陰。あたしの隣でたっぷりとした胸が寝そべり、しきりに上下している。あたしたちは波打ち際でさんざはしゃいだ後だった。 「静かですね」 逆光の中でカレシはあたしに囁いた。あたしの上を通り越す細い腕は、夏…

バンカーサイド・オクトーバ

校舎はついさっきまで赤かった。それは藍色に染まり、すぐに闇の中で仄かに月の光を反射するだけになった。半分強の月が高いところでたったひとり、申し訳なさそうに座している。 文化祭前の最後の夜だった。さっきまで俺が「現実的な確率遊戯」をしていたプ…

ファング・オブ・ザ・フロッグ

四年ぶりの飛行場だった。 パパがまた転勤になった。 ママは一週間で何もかもを箱詰めにする遊びに精神を冒された。弟は友達から借りていたゲームソフトを段ボール箱の奥底に封印されてしまった事について壊れたスピーカーのようにぎゃあぎゃあと吠え猛って…