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トランスパラント・フットプリント

ちはやブルーフィルム倉庫

メメントモリ・セメタリー

朱茅ほのかは、猫がどこに帰るのか知りたかった。 それだけなんだ。 塾から帰るところだった。 さっきまでほのかは教室の中にいた。三人の小学生がお行儀良く揃って横並びになれる机と椅子のセット。真ん中の席に座ると授業中にトイレに行きにくくなってしま…

テルミット・ルミネセンス

■1■ ――「納涼十三里半浜大花火大会」 ブロック塀に貼られたポスターだった。近くの中学生が描いたらしきそれは、花火そのものよりも浴衣を纏った少女が真ん中に配置されていた。下の方には日時と場所と注意事項が大きく赤字で印刷されている。その情報の群…

シルクロジック・クロスゴシック

シルクロジック・クロスゴシック 「今度の連休に一緒に釣りでも行きませんか? 二人で!」 ――と来たものだ。これはいわゆるデートのお誘いというものではないのでしょうか? さらに「――連休に」などといっているからには、そう「お泊まり」すらあちら様の視…

アイシクル・サイクル

アイシクル・サイクル 石井孝親〔いしいたかちか〕の火曜と木曜と土曜の朝は早い。 どれくらい早いかというと五時には起きている。そんな時間だとお袋も相手にするのがバカバカしいとばかりに昨日の夜の内に弁当の準備をしておいてくれている。孝親は朝起き…

パーペチュアル・テンペラチュア

――スノウズ―― 寒い日のことだった。 その日も一年生だった。渋谷にも新宿にも寄り道しないまことつまらぬ私だった。ハンバーガーチェーンとコンビニと牛丼屋とベーカリーのある最寄り駅。本屋さんも魚屋さんも肉屋さんもとっくに泥の海に沈んでしまった街を…

シンキング・シンク・ライク・クライシス

夏もなかばの海だった。 赤と白のパラソルの陰。あたしの隣でたっぷりとした胸が寝そべり、しきりに上下している。あたしたちは波打ち際でさんざはしゃいだ後だった。 「静かですね」 逆光の中でカレシはあたしに囁いた。あたしの上を通り越す細い腕は、夏…

バンカーサイド・オクトーバ

校舎はついさっきまで赤かった。それは藍色に染まり、すぐに闇の中で仄かに月の光を反射するだけになった。半分強の月が高いところでたったひとり、申し訳なさそうに座している。 文化祭前の最後の夜だった。さっきまで俺が「現実的な確率遊戯」をしていたプ…

ファング・オブ・ザ・フロッグ

四年ぶりの飛行場だった。 パパがまた転勤になった。 ママは一週間で何もかもを箱詰めにする遊びに精神を冒された。弟は友達から借りていたゲームソフトを段ボール箱の奥底に封印されてしまった事について壊れたスピーカーのようにぎゃあぎゃあと吠え猛って…