百合
高校生 会長・副会長・書記 踏切の向こう側で手をつないでいた。 生徒会の副会長と書記の二人はいつも最後まで残って仕事をしていた。会長の私はというと、家が店をやっているものだから、早く帰って手伝いをするなり家事をするなりのことにあたらねばならな…
大学生 才気ある方視点 ダメそうな子がいつもまとわりついている、いやなきもちはしないけれど、卑屈なところがカンにさわる、助けてもらわないとなんもできないのに。いろいろいっていると「でも、あたしはあなたみたいにできるわけじゃないんだもの。すご…
私は、美術部だった。だったというのはもうやめてしまったからだ、わがままを通して親に買わせた油絵の具はそろそろロッカーの中でカビが生えていることだろう。やめたことは親には言っておらず、活動をしていることにして必要経費と言って小遣いをせびるの…
夥しい死の上にいた。 風が金網を揺らす音がする。室外機がやかましく唸っている。それだけ。あとは、私の呼吸の音、私の心臓の音。それすらもどこか遠くからサランラップ越しに聞こえてくる。電子レンジであたためられゆく仔猫のビデオを見ているかのごとし…
――スノウズ―― 寒い日のことだった。 その日も一年生だった。渋谷にも新宿にも寄り道しないまことつまらぬ私だった。ハンバーガーチェーンとコンビニと牛丼屋とベーカリーのある最寄り駅。本屋さんも魚屋さんも肉屋さんもとっくに泥の海に沈んでしまった街を…