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トランスパラント・フットプリント

ちはやブルーフィルム倉庫

YAMINABE

闇鍋戦記

□キャラクター

 

「はい、かぁん。もひとつ、かぁん」

「なっ……ば、化け物!!」

「失敬な。ああ、わたしを化け物と呼ばわったことにじゃあないよ。そんな豆鉄砲でこの『逆鍋』がどうにかできると思っちまったことだね」

「ぬう……」

 芝屋狭左衛門の視界が茂みの中を追う、煙の中にまだ鉄と悪意の臭いが消えない。イザナはいかにも面倒な事のように先回りをして言ってやる。

「あーやめておきな、次はわたしも外しはしないよ。火縄でもメリケンさんの小筒でもかわりゃしない。鉛は」

「やれぇーーッ!」

 忠告は無意味だった。鍋島イザナがその黒鉄鍋の中に目を隠した時に、もう全ては終わっていた。五つの長筒から放たれた凶弾は足の腱、心の臓、肺腑、舌、そして脾臓を撃ち抜き、

 芝屋はどうと音を立てて倒れた。

「あァッ! 狭左衛門どの!」

「わかったろう、この『逆鍋』に飛び道具は通用しない。それでもまだわたしの闇鍋が欲しいのなら、刀で来るといい」

 鍋島イザナは生来争いを好まない。血の臭いを思い出す度に飯が不味くなると信じて疑わない。今しがたはなった苛烈な挑発も、争いを避ける為の、あわよくばこの場を、この死体ひとつだけで去って欲しいという淡い願いだった。

「ぬぅっ! 斬るゥッ!!」

「お、おう! 死ね化け物!」

 淡かった。それでも飛び道具が通用しないよという部分は汲んで貰えたのか、抜刀して飛び掛ってくる四人。ひとりはきっと逃げた。全員がそうならよかった。無闇に飛び込んでくる全ての一の太刀を黒鉄鍋を重心にした運行でかわしていく。距離をとりながらイザナは鍋の奥に右手を伸ばし、己の得物を掴む。

「ぬ!?」

「怯えるなよ、そう、大したものじゃない」

 その通り、見た目は大したものではない。鍋島イザナの頭に逆さに乗った鍋の中から出てきたのは杓文字。侍たちの目に見えるのは米びつから米を掬うための杓文字である。

「しゃもじ……」

「いかにも、これでお相手しよう――。さあて、どこまですくえるか」

 

 

 

■鍋島イザナ

なべしまいざな。主人公。一人称は私。結局作中で語られることは無かったが、いわゆる一国一城のお姫様であった。七つ鍋のひとつ黒鍋を戯れに被ってしまいその呪いを受け、外せなくなる。黒鍋の呼ぶ不幸を避ける為に国を一人(出た時には何人かついて来ていた様だが)出帆し、鍋を外すための手がかりを求める旅を続けている。

(モチーフはハチカツギヒメ。宗教狂いで死に掛けた実の母が外れぬ鉢をかぶせ、継母がそれを気色悪いと言って放逐し、やがてその気立てに惚れた男が鉢を割ってみると結構美人じゃん! 儲け! みたいな話。要は「重い皮膚病」の話ではないかね)

 

 

 

「鍋を立てれば灰汁が浮く、

 世になぞらえば悪が浮く

 しかして鍋も人の世も

 全てすくえば、味が無い」

 

 謡うようにして鍋島イザナが紡ぐ言葉を、八木は自分に向けられたものだと気づかなかった。

「そうは思わぬか、新米」

「は?」

 

 生返事をしてしまってからようやく、八木が気づく。しかしそのとき既にイザナは眉間に思いっきり皺を寄せている。八木は「ありゃあ相当怒っているのだ」と見抜き、そんな自分の推察力に得心する。そもそも最初から生返事などせねばいいのだが、そんなに器用ならここで頷いたりしてイザナ姐さんの不興の目盛りを振り切らせたりしない。

 

「なァ、八木ィ」

「は?」

 

 また生返事。イザナの眉間の皺が限界を越えて平常に戻る。その代わりに八木は学習しない。いや、学習はしているのだろうがそれはいつも遅々たるものである。尊敬している鍋島イザナの役に立ちたいといつも思っていこそすれ、不興をわざわざ買おうなんて思ってはいない。

 だが、その不器用さに救われてもいる――。

 イザナは気付かぬうちに、愚痴をこぼしていた。目の前で吹きこぼれる鍋のごとく。

「どれだけ高く昇ろうとも、天よりも地のそれが近いは道理というもの。鳥ですらも地べたに束縛からは放たれず、水を飲むとき、子に餌をやるとき、死ぬ時は泥に捕まるのだ。なんと不自由な身では無いか」

「不自由、ですかねェ」

 八木は歯根に刺さった小骨を探っているような顔をして、そうごちる。

「なんだ、言いたい事があるのか。新米」

「いえ。姐さん、俺ぁ難しいことはさっぱりわかりゃあしません。鳥みたいに、ましてやそれ以上に高く飛びたいなんて思ったこと御座んせんのですわ」

「気持ちいいぞ、きっと」

「そりゃあ姐さん、いつもそんなに重ぅて黒いの被ってりゃあ、そんな腐りもするでしょうや」

「馬鹿を言え」

「俺だってね、前も見えねえ様なざんざ雨の降るよかあ、おてんと様が照ってる方がいいに決まってる。でも、姐さんのは憧れだ。俺ン村の娘ッコがしきりに町に惚れっちまうのとかわんねんじゃねえですかい」

「……言うなァ、新米」

 イザナは、あばら家の柱に背中をもたれさせたまま、鍋を目深にして笑う。

「姐さん」

「くくっ、なんだ? 真面目な顔して」

「俺ェみたいな百姓上がりは、空が怖くて怖くて仕方ないんでさあ。だから顔を合わせれば何よりも先ず天気の話だ、おてんと様はなんでもしてくれっちまうから」

「ふむ」

 鍋の中を低く、生返事がひびく。酒の肴になろうかと他愛も無い話をしようと思えばこのザマ。イザナは二度と無駄な話などするまいと思った。話はこれで終わりだ。

「だから、姐さん」

 なぜか続いた。イザナはそれに返事を返さず視線だけを向ける。もっとも、その視線は鍋に遮られていて、新米からは見えなかったけれど。

「姐さんそんな『空を飛びたい』なんてのは言わないでおくのが二番目にいいんでさ」

「二番目?」

 なんで一番ではないのか、という疑問には答えずに新米は続ける。

「正直な話、俺ァ、そのナベの中がどうなってるのか不思議でしょうがねえんでさ。怖いんでさァ。だっどもそれァ考えねえのが一番、考えちまって、それを口に出しちまったらそのナベと、それをかぶってる姐さんが、おかしいのを通り越して怖ろしくなっちまうんだ」

 鍋島イザナは悟る。考えない事と言わない事、そうして危険に触れずにヘラヘラと笑って生きるのが八木の土と泥に塗れて生き延びながら勝ち取った生き方なのだ。

「はは、もう言ってしまっている。……怖いのか」

 八木は頷いた。

 イザナの鍋はいわゆる呪いに塗れている。未だに外し方のわからぬこの死臭の塊のような鍋。多賀杓子で掬った闇が鍋の深みに澱となって溜まり、その澱がまたイザナの身体を少しずつ蝕んでいる。八木が恐れていると言ったのはこの鍋か、それとも、イザナそのものなのか。そこまで考えて、イザナはもうひとつ八木の言ったことを思い出す。そうだ、考えても仕方の無いことだ。

 

 

「ありがとう」

「へ?」

「ああ、いや……くだらぬ話を聞いてくれて有り難う、といったところだ」

「ふぅん。……ああ、でも姐さん。空を飛ぶなんてのは、そうできたらきっと、気持ちのいいことだと俺も思いまさァね」

「そうだな」

 そういって、二人して笑った。

 

 

■八木新助

やぎしんすけ。新米。もともとの案では新谷宗八(新八十八)でより新米っぽい名前だったがヤソの音が差別的というクレームがついたので現在の名前に落ち着く。もちろんそんなクレームが来るはずも無く、家政婦は黙殺。しょせん百姓上がりが刀持ってイキがっても大した結末にはなりませんよという教訓を体現してくれるキャラになる予定。

 

 

 

「なんだ、そのヘラは」

「ヘラ? ぬしはこれがただのヘラに、ヘラにしか見えぬと、そう云うのか。はは、そうか、なんとも難儀な事だな」

「どう見てもヘラではないか。それで土をこねるか、それとも粟でも掬うのか。剣と相対するに、そんなものを出してくるとはいかなる――」

「これはヘラではない、杓子よ」

「……ヘラかシャクシか知らぬが、だからどうしたと云うのだ。そんなもので人が斬れるかよ。貴様の得物を出さぬか!」

「急くなよ。血にも力にもぬしが飢えているのはいかにも見れば直ぐにわかる。だが、急けば貰いは少ない。それに得物はこの『多賀杓子』がすでに見えておるだろう?」

「まぁだ戯れるか、そのシャクシが鉄でできているとでも抜かすのかぁッ!」

 

 柳川堂定にとって、文明開化であるとかそういう類の戯言はあまりにも不愉快な話であった。剣を捧げるべき幕府は倒れ、着物も家も質に入って、それでも刀だけは武士の魂と信じて疑わない、そんなカンカンアタマが女子供に因縁つけられて冷静でいられるはずも無かった。

 彼の、柳川のほんのすこしの名誉の為に加えておくと、彼は弱くない。むしろ、この明治の世に生きる使い手としては強い方に分類される、不器用で一本気、融通が利かない、こんな波乱の世の中でなければよくできた忠義者にちがいなかったろうに――。

 

■柳川堂定

やながわみちさだ。ドジョウ鍋。ぬるぬるとつかみどころがないが、食ってみると泥臭く、意外と骨も味もある。そんなキャラ。玉子を落とすと尚良い。青鍋の持ち主。通称鍋奉行。七つ鍋に執着はしているが、呪いを解こうというわけでもない。

 

 

 

 

 

□たれながし

 

 手にナベつかみとおたま、頭に逆さナベをかぶった女子に萌えよう。

 

 武器であるところのおたまは語源であるところの『お多賀杓子』でいいとして、ナベツカミはその多賀杓子がすげえ熱量をもつとかそんな感じでいかがでしょう。もしくは、シャクシが持つ物の力量を試す為に最初に試練を課す、とかがベタでいいかしらん。「闇鍋」という単語に反応してお玉になる、イメージとしては卍解。オタマはアク(灰汁と悪)を掬い、グ(具と愚)を掬い、人を救う。「掬う」と「巣食う」は通じるのかというあたりまで踏むと面倒っぽいのでやめておこう。あと、被っている黒鉄鍋は明治におけるオーバーテクノロジーであらゆる遠距離攻撃を弾き返す能力を持っています。人呼んで奥義『逆鍋(さかさなべ)』イメージとしては大魔王バーン様のマホカンタ。なんかジャンプ大好きっ子みたいだがそんなことはない。

 

 お玉に変化する前の杓子のときになんか書いてあるといい。臨機応変とか。面白い四文字熟語を主張する会。毎度変わると杓子そのものが生きている感じが出て面白いかもしれませんね。お多賀杓子と形が似ているのでおたまじゃくしになったという事は成長するとカエルになるんですかね。ラスボスはツボカビ病。そうなると生態系のバランスを保つために戦うという大義名分も出てきたわけですが。WHO的にボツ、世界の不安をいたずらにあおってはいけないとのお達しでした。

 

 折しも諏訪神社のクニツカミであるミシャグジさまと音が似ているので使える!

 

 ところで名前どうしようか多賀神社の神様はイザナキイザナミらしいよ、すげえな、国生まれちゃうよ! じゃあイザナでいいや。わー(歓声)。そんなわけでご利益としては寿命が延びます。よし、寿命を伸ばす能力もつけよう。すげえぞナベ姉さん。

 

 畏れ多い名前になったもんだ。イザナの姐さんとか呼ばれます。

 

 

 後は新米八木君。杓子杓文字で最後に掬うのは結局米でありましたというオチにできるかと思った。思っただけ。名前は新谷宗八、新と八十八で新米。どっかでみた名前なので八木新助に変える。ARAの音がオタクワールドに溢れているだけかしらん。ヤソの音がなんかサベツテキっぽい気がするしな、わらい。

 

 

 イザナと新米が旅をするのはいいとして、目的としては呪われた鍋を外すための旅をするということなのか。その手段として多賀杓子で悪を救っているとかそういうことなのか。結局、呪いをとくには七色の鍋を揃えないといけないとかなると無駄に少年漫画っぽくてよろしい。だいたい二つ目を手に入れたあたりで打ち切り。やっぱりジャンプ好きなの? いや、別に。鍋姐さんの戦いはこれからだ! 新米は鍋姐さんの生き別れの弟。ベタすぎて穴という穴から血が出そうだ、そろそろリアルに病院に行ったほうがいいと思うね。なあに、まだまだだよ明智君! 小林君、君はいつからぼくを君付けでよぶようになったのかね。げぇ、関羽! 誰が関羽か。

 

 鍋ブラックはイザナでいいんだが、鍋レッドはチゲ鍋なのか、すると半島からやってきた刺客か。ブルー鍋とか想像したく無いんだけど、考えないとダメですか。グリーンはきっとカビが生えていて、食べ物を粗末にすると怒るにちがいないのである。もったいない。えーしー。

 

 あと登場人物は柳川(鍋)とか鍋から色々。緒方洪庵福沢諭吉もだすか、牛鍋派で。

 

 

□放送予定

 

第一話 鍋の王

 

 導入。八木と鍋島イザナの出会い。成りあがろうとクワを刀に持ち替えて都に出てきたは良いが、生きていけずに追いはぎに身をやつす決心をする。初仕事をせんとばかりにでくわしたのは、なぜか黒い鍋を目深に被った女だった。女だてらにひとり旅をするなら、多少の銭は持っていよう、痛い目に合いたくなければ命まではとらぬ身包み置いてゆけ。決まりのセリフの返事は呵呵大笑、どこから出したかわからぬ杓文字なんぞに刀捌かれ、翻弄され、あげく心の臓の奥までそれを突っ込まれる。

 

 

第二話 黒い鍋

 

 鍋島イザナは鍋を被っている。その鍋は外す事ができない呪いの鍋。七つの鍋をそろえると呪いが解かれるという。

 

第三話 鍋奉行

 

 鍋奉行柳川登場。柳川は青鍋の持ち主と自称したが、見た目、どこにも鍋など持っていない。彼の刀はその鍋を溶かして鋳たものだという。鍋をそろえねばならぬとばかりに襲い来る柳川、その刀、青龍鍋はいわゆる「止める」力を持っていた。空を切り空気の時間をとめることでつくられた透明な壁に閉ざされ、イザナはやがて空気を得られずに気を失う。すると待っていたように黒鍋が周りの止まった空気ごとを吸い込む。闇の色を携えて、闇鍋が覚醒する。

 

第四話 割れ鍋と落し蓋

 

 台風に煽られ、あばら家に逃れる二人。イザナは過去、そして弱さ、憧れを語る。八木は空に憧れることは馬鹿馬鹿しいと言う。掴めないものや届かないものを手に入れたいと願うのは人を幸せになんかしないと。だけど空はきれいだと付け足す。イザナの鍋の中身を見てはみたいが、それを無理に見ることをしたいわけではないと。イザナは無理矢理にこの鍋を外そうとしてきた自分と、鍋島家の面々を思い浮かべ、思っても見ない考えに安らぎを覚え、寄りかかってみてもいいかと考える。夜は更けていく。

 

第五・六話 ワタナベ(上・下)

 

ある神社に神体として祀られていた二番目の鍋。綿で出来ているらしいその鍋は軽く柔らかく、しかしその形を崩さない。その背反した存在が既に常識の埒外であったが、どう見てもその綿の鍋はイザナの黒鍋や柳川の青鍋のように人知を著しく踏み越えた忌まわしい鍋と同種には見えなかった。イザナはこれが自分の鍋だったら、まだすくわれたかも知れんな、などと軽口を叩く。そもそもそうさせてしまう姿が綿鍋の魔たるゆえんであったのかも知れないけれど、不覚か迂闊かイザナはそれを八木の静止も聞かず、戯れに黒鍋の上から被ってしまう。

「ほれ、どう」言い終わらないうちに、悲鳴も上げる間もなく、ぶわとひろがった綿糸にカイコのマユのようにされて、消えた。黒鍋と白鍋が境内の砂利の上に落ちて、黒鍋だけが鈍い金属音を響かせる。夜はまだ深い。

 

 

第七話 鍋奉行ふたたび

 

 

 がんばれ柳川さん。

 

 

第八話 鍋、燃える

 

 三番目の鍋の情報を聞きつけたイザナと八木、そして少し後ろからついてくる柳川は一路北へ。冷害で飢えた村へ立ち寄ると、子らが鍋を囲んでいるようだった。その中心にあったのは赤い鍋、その下には火の代わりに人があった。「あった」というのは、イザナにはそれが生きているように見えなかったのだ。やがて、あつものを食べているはずの子らは、それでも寒さを訴え、イザナたちの目の前で凍えていく。それは熱を奪う赤い鍋の仕業だった。子らがすべて冷たくなりゆくなか、鍋の主に迫るイザナ。赤い鍋の主は血色を取り戻し静かに目を開け、そしてイザナに問う「では訊くが、君の鍋は人を食わぬのか?」言葉を失うイザナ。そして「寒いなあ」と残して赤い鍋の主は名前も残さずに息絶えた。八木は鍋の中に残った雑穀を後で食べる気なのか「もったいない」とまとめ始めた。

そして八木が残り物をさらい終えるのをまつように、赤い鍋がイザナの黒鍋の中に霧のようになり、吸い込まれていく。

 

 そして、すべての鍋を食い終えたとばかりに、イザナの頭上の黒鍋が消えた。

 ついでに、新米も。

 

 

第九話 ノット・アローン/ビラブド・エブリバディ

 

 音も立てずに鍋は鍋島イザナの天蓋から失われた。イザナの目的は達成された、しかし、同時に彼女は多賀杓子の力とかけがえの無いものを失った。

 すべての鍋を統べる白磁の鍋が八木を選んだ。鍋島イザナがすくって来た悪が八木の奥へ巣食う。無力なイザナはここに来て多賀杓子の力を願う。しかし願っても願った時に力が得られるほど世の中は甘くできてはいない。不吉な黒いものが八木と同化した白磁の鍋から溢れる。

 

 その時、後ろから迫る柳川の刀が八木の身体を貫く。

 

第十話 おしなべて白く

 

 柳川の刀は確かに八木を殺した、だが八木の身体を殺しても巣食う白磁の鍋は殺せず、逆に返り討ちに会う柳川。柳川の持つ青龍鍋を吸い白磁の鍋は完成にまた近づく。あとは時を止めようともがく青鍋の呪い、即ち柳川の刀を抜けば事が成る。その刹那、イザナの声が八木に届く、一瞬正気を取り戻した八木は腰の入れ物に入れた赤い鍋の残り物を口に入れる。柳川の刀が時を止め、赤い鍋の呪いが動きを止めていく。それは傍目には八木の身体が白磁の鍋ごと霜が降り、凍り付いていくようにみえる。

 

 凍り行く中で八木ははじめて目の前にあるのがイザナの素顔だと気づく。「やっぱ、かわえかったなぁ、姐さん」八木は笑いながら凍りついていく。イザナははじめて八木が笑ったのを見たような気がする。つかもうとすると、凍った八木の身体は積もって一晩たった雪のように崩れた。

 イザナは泣いた。

 

 

 墓標に杓文字。